50周年とこれから

50周年記念事業「デジタルアーカイブの拓く未来」

岐阜女子大学50周年記念事業として、デジタルアーカイブ学会と連携して「デジタルアーカイブの拓く未来」を開催した。デジタルアーカイブ学会は、21世紀日本のデジタル知識基盤構築のために平成29年5月に生まれた。デジタルアーカイブに関わる関係者の経験と技術を交流・共有し、一層の発展を目指し、人材の育成、技術研究の促進、メタデータを含む標準化に取り組んでいる。

さらに、国と自治体、市民、企業の連携、オープンサイエンスの基盤となる公共的デジタルアーカイブの構築、地域のデジタルアーカイブ構築を支援し、これらの諸方策の根幹をなすデジタル知識基盤社会の法制度がいかにあるべきかについても検討をおこなっている。岐阜女子大学はデジタルアーカイブ学会と連携しデジタルアーカイブ振興を図るため、第1回研究大会を岐阜で開催し、研究者だけでなく国、自治体、博物館、図書館、文書館、企業等の実務担当者を繋ぐネットワーク形成を図った。

主催
学校法人華陽学園 岐阜女子大学 デジタルアーカイブ学会

後援
日本教育情報学会、記録管理学会、情報知識学会、情報メディア学会、文化資源学会、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会、日本出版学会

期日・会場
2017(平成29)年7月22日: 岐阜女子大学 文化情報研究センター

プログラム
基調講演は、会長代行の東京大学大学院情報学環教授吉見俊哉氏により「なぜ、デジタルアーカイブなのか?知識循環型社会の歴史意識」であり、アーカイブの語源から現代に必要とされるデジタルアーカイブの在り方について方向性が示された。次のパネルディスカッションのテーマは、デジタルアーカイブ立国への道程である。パネラーとして東京大学学院情報学環客員准教授生貝直人氏、岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所所長井上透、国立情報学研究所教授高野明彦、常磐大学教授坂井知志、東京大学学院情報学環特任教授柳与志夫が登壇し、法制度、人材、技術、コミュニティーアーカイブの各部会を代表し現在の課題、今後の活動を明らかにした。午後からは、セッション (A) は「広がるデジタルアーカイブ の対象と活用」、セッション (B)は「コミュニティーとデジタルアーカイブ」、セッション (C)は「技術・法制度とデジタルアーカイブ」の3会場に分かれ各6人合計18人の研究発表が行われた。その他、ポスター発表が7件、岐阜女子大学デジタルアーカイブ化プロセス展示、3社のデジタルアーカイブ関連企業展示を実施した。

参加者及び評価
沖縄から北海道まで244名が参加した。属性として大学関係者がほぼ50%を占めていたが、関連企業・団体、博物館、図書館、自治体、弁護士など多様な分野から参加者があった。事後のWebアンケートは有効回答60人の内、47%が大変満足、48%が満足、5%不満足、大変不満足0%であり、高い評価を得て、成功裏に50周年事業を実施することができた。

「木田文庫」と「木田宏オーラルヒストリー」デジタルアーカイブ

岐阜女子大学における木田宏教育資料「木田文庫」の整備は、平成16年からはじまり、平成24年に岐阜女子大学図書館に「木田文庫」が設置・公開されました。
木田宏教育資料とは、木田宏先生が著された書籍や論文等をはじめ、所蔵されていた各種資料、「木田宏オーラルヒストリー」としてまとめられている話の記録等を指します。

木田先生は、昭和21年に文部省に入省され、以後、生涯にわたって、教科書または教科書制度、教育委員会制度等、戦後の教育に関わられ、多くの教育関係の書籍、資料類を残されました。主に、昭和21年~平成17年頃までの戦後の多様な教育関連資料が揃っています。これらは、教育分野における基礎的な資料であり、教育研究分野の貴重な資料といえます。
これらを、木田先生およびご家族のご厚意により、教育研究用として、平成16年(2004)に、図書5,959冊,雑誌4,188冊の計10,147冊,平成24年(2012)に追加として図書125冊、さらに、平成29年(2017)に追加として図書54冊の総計10,326冊を岐阜女子大学に寄贈いただいています(その他、ノート、ハガキ類といった資料も寄贈いただいています)。
岐阜女子大学では、これら寄贈いただいた10,326冊を「木田文庫」として整備しています。

「木田文庫」の整備

「木田文庫」は、木田宏先生のご自宅の書庫に保管されていた木田先生所蔵の書籍、資料類の中から、平成16年と平成24年に岐阜女子大学へ寄贈いただいたもので、とくに、平成24年に寄贈いただいた追加書籍、資料類は、天野貞祐、和辻哲郎、九鬼周造等の著作があり、追加寄贈いただいたご家族によると、木田先生自身が戦前・戦後と大切に保存されていたものであるといいます。
「木田文庫」の整理にあたっては、平成16年3月に木田先生のご自宅に、後藤忠彦先生はじめ、学生数人で伺い、収集させていただきました。その際、"原形保存"・"原秩序尊重"に則り、木田先生のご自宅書庫の書棚ごとに番号を付与し、その番号ごとに箱に入れ、収集し、その番号ごとに目録化し、配架しました。これにより、木田先生が管理されていた書庫について、どのような内容でまとめ、分類されていたかを把握することができます。

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木田先生宅で寄贈図書をまとめる
学生たち(平成16年3月)
木田先生宅書庫(寄贈前)
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収集された寄贈図書(約300箱) 岐阜女子大学で整理する学生たち
(平成24年3月)
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配架された「木田文庫」 木田先生宅の書庫の番号を付与
「木田宏オーラルヒストリー」のデジタルアーカイブ

「木田宏オーラルヒストリー」は、木田宏先生の戦後の教育についての話をまとめたものであり、『木田宏教育資料』第1巻~第5巻に以下の通り収録されています。

  • 昭和20年代初期における教育について (平成7年11月29日・30日)
  • 教育委員会制度の導入と定着(平成8年5月21日・22日)
  • 教職員組合について (平成8年5月22日)
  • 大学問題への取り組み (平成8年9月4日・5日)
  • 社会教育,体育,国際化等の諸問題 (平成8年11月22日)
  • 国立教育研究所時代 (平成10年1月31日)

さらに,上記を総括する内容について、平成16年6月27日・28日に、岐阜女子大学文化情報研究センターにて再度お話しをしていただき、木田先生の話されている様子を映像で記録しました。
平成16年の記録は、「木田宏オーラルヒストリー」デジタルアーカイブとしてまとめ、文部科学省大臣官房ほかの依頼を受け、DVDの制作と提供を行いました。その他、貴重な教育資料(教材)として、岐阜女子大学公開講座等での教育利用および一部のインターネット公開等を行っています。
また,「木田宏オーラルヒストリー」については、岐阜大学にて収録された平成7年から平成10年までのものと、デジタルアーカイブを行った平成16年のものを併せ、冊子『木田宏オーラルヒストリー』として並製本および上製本にそれぞれまとめています。

「木田宏オーラルヒストリー」のデジタルアーカイブ再構成-集合保存の概念-

初期の「木田宏オーラルヒストリー」デジタルアーカイブ公開から約10年が経過した現在、DVDに収録したコンテンツに、互換性等の不具合が生じたため、デジタルアーカイブとして再構成を行いました。
再構成にあたり、提示機器の変化に左右されない方法を採り、また、話をされている映像、話の内容を示す文字起こし、話に関連する各種資料等を集合させた記録である集合保存(保管)形式でまとめました。
集合保存(保管)とは、さまざまな資料が混在するデジタルアーカイブにおいて、多様な資料を提供し、利用者が必要に応じて選択し、活用できる保管とその提示形式をさします。
「木田宏オーラルヒストリー」デジタルアーカイブでは、木田先生の話の映像情報、話の文字起こし、過去のオーラルヒストリーの文字情報、話に関連する文献資料や写真資料等、様々な資料があり、それらを利用者が必要に応じて選択し、活用できるように構成しました。

研究利用ガイドの刊行

木田宏教育資料「木田文庫」には、戦後の教科書および教科書制度、教育委員会制度等、多くの課題に関わる多種多様な資料があります。また、それら、書籍、資料類とともに、木田先生のオーラルヒストリーも残されています。これらは、教材開発、教育方法、教育制度等、戦後の教育資料としてさまざまな研究利用が期待できます。
しかし、「木田文庫」として整備されたこれらの資料を一つひとつ紐解き、大学院生や学部生が自分の研究に必要な資料を見つけ出し、研究利用することは容易ではありません。

そこで、大学院生や学部生への研究利用支援として、「木田文庫」・「木田宏オーラルヒストリー」の中から、後藤先生が教育研究に役立つと考えられる戦後から現在までの資料を各分野別で抽出し、いくつかの重要資料等を選び、リスト化して提供する研究利用ガイドとして、『木田宏教育資料案内』(1)・(2)の作成を行い、刊行しました。
『木田宏教育資料案内』(1)・(2)は、大学院生や学部生が自分の研究に関係のある資料を選び、そこから、他の資料を探し出し、利用する糸口と出来るよう配慮されています。単に、研究利用できる資料を教えるというものではありません。
例えば、「木田文庫」には、昭和21年3月の米国教育使節団に対する文部大臣(当時)安倍能成氏のあいさつ文や木田先生の著書『新教育と教科書制度』をはじめとした教育研究上重要な資料が整理されており、『木田宏教育資料案内』ではそれらの資料を紹介しながら、他に自分の力でどういう資料を探し、学修する必要があるかを示しています。

岐阜女子大学における木田宏教育資料「木田文庫」、木田宏オーラルヒストリーのデジタルアーカイブは、もともとは、昭和59年頃からの木田宏先生と後藤忠彦先生との信頼関係、強い絆と多くの関係者の尽力により、現在から未来へ継承すべき貴重な教育資料をまとめることができたといえます。

最後に、「木田宏教育資料」として、書籍、資料類を寄贈いただいた故木田宏先生、木田望様はじめご家族のご厚意に、深く感謝いたします。また、長年にわたり、木田宏教育資料の整備に携わってこられた後藤忠彦先生、岐阜大学、公益財団法人パナソニック教育財団ほか、多くの関係者のみなさまのご支援にお礼申し上げます。

学生研究活動デジタルアーカイブ

学生による研究活動の成果として、卒業論文や修士論文のデジタルアーカイブ化を行いました。学生研究活動デジタルアーカイブは、主に学内での利活用を目的とします。キーワード等の情報検索により参考にしたい卒業論文を探し出すことが容易となり、また卒業論文全体から分野や内容の傾向を読み解くことで新たな研究が見出されるなど、研究活動の支援が可能となります。

学生研究活動デジタルアーカイブを実現するために、下図のような構成を作成しました。学生は、教員による指導のもと入力表(メタデータ)を作成し、データベースに登録します。入力表(メタデータ)は、タイトル、氏名、学籍番号、指導者(主査と副査)、所属、キーワード、研究領域、小分類、活動種類、作成年月、要約、データの学内利用の登録・未登録、特色の13項目としました(資料1)。データベースは、本学で導入済みであり、学生も使い慣れているグループウェア「サイボウズ」の「カスタムアプリ機能」を用いて構築し、学生や教員ならば誰でも登録や閲覧ができる形式にしました。

同時に、卒業論文や修士論文、さらには補助資料のデジタルデータの保管も行いました。補助資料では、論文に書けなかったことや映像(動画、静止画)、図、表など、他の学生に役立つような資料を収集の対象としました。実際に収集する際には今後の活用を考慮して、①卒業論文の要旨、②卒業論文の本文、③卒業作品、④その他資料の4種類に分けて、指導教員を通してデジタルデータを収集しました。
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図1 学生研究活動デジタルアーカイブの構成図

学生研究活動デジタルアーカイブは、学生も含む全学で意見を出し合い試行錯誤を重ねることで、より充実したものとなります。学生研究活動デジタルアーカイブを活用する際に、入力表(メタデータ)の項目が適しているのか、収集するデータは不足していないか、データ収集の際の分け方は問題ないのか等の検討や見直しが必要になると考えられます。また現在のカスタムアプリ機能でも検索等は可能ですが、デジタルアーカイブを活用しやすくするには、情報の提示方法にも工夫が必要となります。さらには、知の増殖型サイクルへ展開することで、デジタルアーカイブ研究の進展に加え、岐阜女子大学における研究活動の発展が期待できます。

資料1 学生研究活動デジタルアーカイブ入力表(卒論・修論等)

地域資料デジタルアーカイブ-「沖縄おぅらい」-

岐阜女子大学の地域資料デジタルアーカイブ

岐阜女子大学では2000年から全国の地域資料をデジタルアーカイブ化し、「岐阜女子大学 地域資料デジタルアーカイブ」として約20万件保管しています。多種多様な地域のデジタル資料を教育・研究活動等に利用しています。

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図1 岐阜女子大学の地域資料デジタルアーカイブ

「沖縄おぅらい」の制作

所蔵資料のうち沖縄県の地域資料は約2万件あり、「沖縄デジタルアーカイブ」として保管・利用しています。これら資料は姉妹校提携している沖縄女子短期大学内「岐阜女子大学沖縄サテライトキャンパス」が中心となって収集を行っています。
その「沖縄デジタルアーカイブ」の貴重な地域資料から、沖縄へ修学旅行に赴く高校生の事前事後学習・現地学習の参考になる資料を選定し、「沖縄おぅらい」を制作しています。高校生にわかりやすいよう、多様な地域資料を「観光施設」「平和への願い」「沖縄の世界遺産」「沖縄の生活文化」「沖縄の自然」「沖縄の伝統文化」「沖縄の産業」の7つのカテゴリーに分類し、さまざまな分野から沖縄に興味をもって学習できるようサポートしています。
「沖縄おぅらい」は、本学のデジタルアーカイブ技術と沖縄のネットワークとを活用して制作されています。

「沖縄おぅらい」の特色

「沖縄おぅらい」の特色は、「印刷メディアと通信メディアの連携」です。
「沖縄おぅらい」として作成されている冊子(印刷メディア)とウェブページ(通信メディア)の双方を高校生が必要に応じて利用できるよう、冊子の各コンテンツに二次元コードを付与しています。その二次元コードをタブレットPCやスマートフォンで読取りすることで、冊子に掲載しきれなかったデジタルアーカイブの資料をインターネットを介して得ることができます。

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図2 「沖縄おぅらい」の印刷メディアと通信メディアの連携

「沖縄おぅらい」の利用と展望

「沖縄おぅらい」は、2011年の初版から全国の高等学校のみなさんに累計97,500冊ご利用いただいています(2018年2月現在)。ご活用いただいた高等学校の教員に任意でアンケートを依頼し、その結果・意見をもとに毎年改善を行い、改版しています。
本学50周年には表紙を一新し、AR技術を取入れた冊子「沖縄おぅらい」を希望する高等学校等へ配布いたします。今後も「沖縄デジタルアーカイブ」からよりよい多くの情報を提供し、高校生の心に残る修学旅行をサポートします。
さらに「沖縄デジタルアーカイブ」の資料の利用について、沖縄修学旅行のサポートだけでなく、沖縄県の小学校および中学校での教育利用や、沖縄の観光にも広くご利用いただけるよう、「沖縄デジタルアーカイブ」の充実を計ります。

2011年度 (初版) 10,000冊
2012年度 16,000冊
2013年度 16,000冊
2014年度 14,000冊
2015年度 14,000冊
2016年度 15,000冊
2017年度 12,500冊

※ 毎年約40~50校の高等学校でご利用いただいています。
表1 「沖縄おぅらい」の初版からの各年利用冊数(2018年2月現在)

文部科学省GP(Good Practice = 優れた取組)採択事業

岐阜女子大学では、平成16年度に、文部科学省の「現代GP」に採択され、以後、社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業、組織的な大学院教育改革推進プログラム、「大学教育・学生支援推進事業」学生支援推進プログラムと、一連のGP関連事業を受託し、教育改革の取組を行いました。
GPとは、「Good Practice」=「優れた取組」を指し、国内外の大学教育改革で注目されている言葉(略語)です。
文部科学省の各種GPでは、国公私立大学を通じて、教育の質向上に向けた大学教育改革の取組を選定し、各大学などでの教育改革の取組を促進するものです。

以下、本学の各種採択事業の成果の概要を報告します。

平成16年度~平成18年度

現代的教育ニーズ取り組み支援プログラム(現代GP)
「デジタル・アーキビストの養成-文化情報の創造、保護・管理、流通利用を支援する-」

本事業は、文化財、文化活動を支援する人材の養成が課題とされる中、とくに、デジタルアーカイブ開発において、文化の基礎知識と、情報活用力、法と倫理の知識などに対処できるデジタル・アーキビストの養成を進め、関係者への意見聴取を重ね、調査データをもとに、検討・改善を進めデジタル・アーキビストの養成カリキュラムを開発しました。
開発したカリキュラムは、本学のみでなく、他大学での利用、教育課程への位置付けが行われ、デジタル・アーキビスト資格認定機構の設置に至りました。
デジタル・アーキビスト資格認定機構設置後、「準デジタル・アーキビスト」、「デジタル・アーキビスト」、「上級デジタル・アーキビスト」などの各資格を見通した、連続性のあるカリキュラム構成の検討や、新しい文化創造活動のできる人材としての要望から、高校生から、大学生、社会人に至るまでの人材養成の支援への必要性が認識されました。

平成19年度~平成21年度

社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業
本事業は、(1)の現代GPの選定を受けて開発したデジタル・アーキビストの養成カリキュラムを社会人に応用することを目的に取り組んだものです。岐阜女子大学が主体となり、NPO法人日本アーカイブ協会、国立科学博物館、岐阜県博物館、沖縄県教育委員会、新潟大学、富山大学、常磐大学、大阪学院大学、奈良産業大学、沖縄女子短期大学、山形県生涯学習センター、国立女性教育会館、株式会社レ・サンクなどの協力を得て実施しました。
社会人は、それぞれの職場、状況において、情報社会への対応が求められており、日常の業務の中で、課題解決の方法を模索しています。本事業は、こうした社会人の学びへのニーズに対応するプログラムであったと評価されています。
また、社会人を対象としたデジタル・アーキビスト教育プログラムは、社会人の職業やレディネスに応じたカリキュラム、つまり、受講者の専門性に応じた複数のカリキュラムの開発が必要であるとされました。

平成20年度~平成22年度

組織的な大学院教育改革推進プログラム「実践力のある上級デジタルアーキビスト育成」
本事業は、指導的立場となる上級デジタル・アーキビストの養成に対する高いニーズにこたえるため、大学院生の上級デジタル・アーキビストの教育プログラムの開発、実践力育成の取組みを行ったものです。
具体的には、上級デジタル・アーキビストのカリキュラムを軸に、講座、演習に利用できる各種のテキスト、教材開発を行いました。
また、上級デジタル・アーキビストとして必要とされる実践力の育成を目的として、文化遺産を有する地域に赴いて実施する実践的な演習プログラムを構成しました。

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沖縄での三線デジタルアーカイブ 院生の学会発表

本事業期間の学位授与者(修士)28名について、学会発表26件、学術誌などへの論文発表数50件、上級デジタル・アーキビスト資格取得者数は、通学制で100%(通信制を含めた割合は72.4%)、大学および小中高等学校の教職員、企業の研究職などへの就職率93%を達成しました。

平成21年度~平成23年度

「大学教育・学生支援推進事業」学生支援推進プログラム
「社会ニーズに対応した学士力と高い就職率・定着率を目指す教育」

本事業は、本学で従来から進めてきた、確かな学士力の育成を目指した初年次教育、専門教育、キャリア教育などの教育実践活動の成果をもとに、高等学校などから入学する学生の多様性に配慮した入学前課題から、入学後の初年次教育、専門教育、キャリア教育の全学的な体系化と各教育分野でのコア・カリキュラム計画と実践、学修評価改善システム、補完教育の整備を進めたものです。
本事業の中で開発を進めた各学科・専攻(専修)の入学前課題、初年次教育テキスト、専門基礎テキスト、資格取得ガイドブックなどは、本事業終了後も、毎年、適宜改訂を重ね、一部は、外部評価委員会などで、専門家の評価、指導を受けています。

デジタルアーカイブ学会

デジタルアーカイブ研究の動向

日本の目指す知識基盤社会を支えるのはデジタルアーカイブといっても過言ではない。初期の文化遺産を中心とした展示やウェブ公開など提示中心から、いかに社会の全領域で知的生産やナレッジマネジメントに活用できるインターフェイス、横断的ネットワークなどの環境を確保するかの段階には入ったといえる。

海外の動向と国内の課題

しかし、Europeana(ユーロピアーナ)やDPLA(米国デジタル公共図書館)では、膨大なデータが2次利用可能なクリエイティブコモンズCC0(パブリックドメイン)で提供されるなど、欧米に比較して日本では基盤整備が遅れている。
さらに、訪日外国人数が増加しており、2020年東京オリンピック・パラリピックまでにはインバウンドに対する文化資源の横断的情報提供のベースとしてデジタルアーカイブの構築が求められている。

そのため、デジタルアーカイブの振興が急務となっており、2015年より内閣府知財本部がデジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会、実務者協議会を開催し、「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」2017年4月や「知的財産推進計画2017」2017年5月を取りまとめている。産業界では2017年4月にデジタルアーカイブコンソーシアムが設立され、企業間の情報交換や政府への働きかけを開始した。さらに、東京大学大学院情報学環に事務局を置くデジタルアーカイブ研究機関連絡会も2016年6月より活動を始めた。
一方、オープンデータ自治体の増加に見られる地域のデジタルデータの共有・活用などのデジタルアーカイブを地方創生の核とする動きがある。また、産業界では、これまで社史の編纂のための一部のデータ蓄積から、生産性向上のための会社情報資産の総合的なデータ蓄積と活用を目的としたデジタルアーカイブ開発が進みつつある。

デジタルアーカイブ学会誕生

岐阜女子大学は2000年の文化情報研究センターの設置以来、地域文化デジタルアーカイブ開発に取り組み約20万件のデータを蓄積している。また、デジタルアーカイブを開発する人材としてのデジタルアーキビスト養成に関して、文部科学省現代GPによる助成を3期連続して受けるなど国内のデジタルアーカイブを理論研究・実践を牽引しており、学会の設立を計画していた。
東京大学大学院情報学環にデジタルアーカイブ関連の寄付講座が設置されたことを契機に、2016年5月より、東京大学と岐阜女子大学が中心となって学会設立準備を進めていた。
その結果、デジタルアーカイブ学会が、関係する博物館・図書館・文書館の実務者,大学や研究機関の研究者,企業アーカイブの担当者,関係企業の開発者など172名が参加し,東京大学情報学環を事務局として2017年4月15日に設立総会が開催され、2017年5月に正式に設立した。

デジタルアーカイブ学会の活動と岐阜女子大学

活動は法制度部会、人材養成部会、技術部会、コミュニティーアーカイブ部会を設け、学会誌の発行、研究大会・研究例会の開催など、多様なセクターとの学際的な連携を目指して活動を行っている。7月22日に第1回研究大会(岐阜女子大学)を開催し全国27都道府県から244名が参加された。第2回研究大会は2018年3月9・10日に東京大学で開催され270名が参加した。第3回は2019年3月に京都大学での開催を予定している。

学会は、国内のデジタルアーカイブに関わる関係者の経験と技術を交流・共有し、その一層の発展を目指し、人材の育成、技術研究の促進、メタデータを含む標準化に取り組むことや、国と自治体、市民、企業の連携、オープンサイエンスの基盤となる公共的デジタルアーカイブの構築、地域のデジタルアーカイブ構築を支援し、これらの諸方策の根幹をなすデジタル知識基盤社会の法制度がいかにあるべきかについても検討を行い、デジタルアーカイブ整備基本法など政策提言を積極的に行っている。本学は、後藤学長が顧問に就任し、理事や評議員を出し、第2回研究例会等のイベント開催するなど、積極的に学会運営に関与している。

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デジタルアーカイブ学会設立の背景と趣旨(説明)東京大学大学院情報学環教授 吉見俊哉

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デジタルアーカイブ学会第1回研究大会(岐阜女子大学)

ダイバーシティ事業

平成27年度岐阜大学が申請機関、岐阜薬科大学、アピ株式会社と岐阜女子大学が共同実施機関として申請した「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティイブ(連携)」が選定され、3年目の実績を終えようとしています。
本学では、学長のリーダーシップのもと、女性研究者や女性の学部長・研究科長など管理職の増を図り、若い研究者(特に女性研究者)の育成として研究環境、研究支援体制の整備・充実を図るため、外部から特任教授を雇用し、きめ細かい支援体制を構築してきました。
これまでの主な取り組みは下記のとおりで、現在、女性研究者採用比率、女性研究者在職比率、女性研究者上位職比率などの目標数値はすでに達成されています。

女性研究者の研究力向上を図るための体制及び取組内容

①連携型共同研究プロジェクト支援
他の共同実施機関と多分野にわたる共同研究を実現し、女性研究者の研究進捗管理や協力体制の構築等の能力の向上を目指して、連携型共同研究プロジェクトの支援をしました。

  • 平成27年度研究課題:女子大学生の首尾一貫感覚(SOC)の特徴-女性の活躍を促進する心理的要因の検討-
    研究代表者:佐々木 恵理(岐阜女子大学  文化創造学部・講師)
  • 平成28年度研究課題:新たな学びの空間の在り方に関する研究
    研究代表者:斎藤 陽子 (岐阜女子大学 文化創造学部 准教授)
  • 平成29年度研究課題:冷凍技術の向上とビタミンB6損失抑制の検討
    研究代表者:伊佐 保香(岐阜女子大学 家政学部・講師)

②研究倫理研修
研究倫理の向上を目的として、研修会を実施しました。

  • 平成27年度講師:大鷲正和氏(日本学術振興会 研究事業部 研究助成第一課長)
  • 平成28年度講師:児島 明佳氏(日本学術振興会 研究事業部研究事業課長(兼)研究倫理推進室長)
  • 平成29年度講師:笹川 光氏(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台事務部長)

③外部資金獲得支援
若手女性研究者に対して、従来からの本学教員による支援に加え、一層の研究資金獲得を目指し、研究支援の実績がある第三者(学外)を平成28年度より講師に迎え、支援しました。

女性研究者の上位職への登用に向けた取組

①トップマネジメントセミナー
本事業の趣旨、ダイバーシティの必要性と効果について理解を深めることを目的にトップマネジメントセミナーを開催しました。

  • 平成27年度講師:佐々木正峰氏(公益財団法人 文化財建造物保存技術協会理事長)
  • 平成28年度講師:早川 信夫氏(NHK 解説委員)
  • 平成29年度講師:井上 敬子氏(㈱文藝春秋ナンバー・クレア局クレア部門担当局長)

②リーダーシップ研修
若手女性研究者を対象に、PIとして活躍している女性研究者や企業の管理的立場で活躍する講師を招いたリーダーシップ研修を開催しました。

  • 平成27年度講師:河野 恭子氏(岐阜県子ども・女性局長)
  • 平成28年度講師:森田 順子氏(株式会社岐阜放送 代表取締役社長)

③研究補助員配置制度
本学に所属する育児中等の女性研究者に研究補助員を配置し、研究支援をしました。

意識啓発や組織改革等を図るための取組

①シンポジウム開催
本事業を実施し、女性研究者の意識啓発と活躍促進を図るためシンポジウムを開催しました。

  • 平成29年度基調講演講師:黒木 登志夫氏(日本学術振興会 学術システム研究センター 顧問(WPIアカデミー・ディレクター))
    パネルディスカッション モデレーター:三輪 聖子氏(岐阜女子大学家政学部 教授)
    パネリスト 伊佐 保香氏( 岐阜女子大学家政学部 講師)伊野 陽子氏(岐阜薬科大学薬局薬学研究室 講師)清島 眞理子氏(岐阜大学大学院医学系研究科 教授)田澤 茂実氏(アピ株式会社長良川リサーチセンター研究員)

②フォーラムの開催
女性研究者の積極的活用及び上位職登用をテーマにフォーラムを開催しました。

  • 平成27年度講師:松川 禮子氏(岐阜県教育委員会教育長)三宅 茜巳氏(岐阜女子大学文化創造学部長)
  • 平成28年度講師:箕浦 由美子氏(岐阜新聞社 生活文化部長)三宅 茜巳氏(岐阜女子大学文化創造学部長)
女子学生・女性研究者向けキャリアパス支援の取組

①ロールモデル講演会の開催
女子大学院生及び若手研究者を対象に、キャリアパス支援のためのロールモデル講演会を開催しました。

私立大学研究ブランディング事業

私立大学研究ブランディング事業
「地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成のための基盤整備事業」

目 的

  • 本事業は、地域に根差し地域社会に貢献する大学として、本学独自で育んできたデジタルアーカイブ研究を活用し、地域資源のデジタルアーカイブ化とその展開によって、伝統文化産業の活性化などの地域課題の実践的な解決や新しい文化を創造できる人材育成を行い、岐阜地域の知の拠点となる大学を目指すものである。
  • 具体的には、地域における地方創成イノベーション計画に呼応し、以下に示す地域の代表的な伝統文化産業と観光資源について、デジタルアーカイブ研究とそれの利活用を行い、それぞれ伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘を行う。
    (1)飛騨高山の匠の技デジタルアーカイブと伝統文化産業の振興
    (2)郡上白山文化遺産のデジタルアーカイブと新たな観光資源の発掘
  • 地域と大学が緊密に連携してデジタルアーカイブ研究を推進し、地域で新たな価値を創造できる人材の養成を行う。
現状と課題認識
  • 地域の大学は知の拠点として地域で活躍できる人材の育成が使命である。しかし、これまで地域との連携は十分でなく、地域の真のニーズに応えた教育や研究が大学でなされてきたとは言い難い。
  • 特に、農山間地が多く自然が豊かな岐阜県では、木工等に関する伝統文化産業の継承や美しい文化遺産の活用と新たな観光資源の発掘が重点課題となっており、それを担う人材の育成と供給が重要となってきた。
  • このために本学では、デジタルアーカイブの拠点大学として、2013年より「知の増殖型サイクル」を開発し、観光、教育、企業の分野での人材育成の試行研究を行ってきた。
  • その研究成果として、沖縄や高山の観光の振興並びに沖縄県の小学校では有意な学力の向上が認められ、デジタルアーカイブの利活用が本事業の推進に有効との感触を得た。
計画の内容

①飛騨高山の匠の技デジタルアーカイブと伝統文化産業の振興

  • 伝統文化産業(飛騨春慶・一位一刀彫等)を多視点でデジタルアーカイブし、歴史的な視点を総合的にまとめ、匠の"こころ"をオーラルヒストリー等により「知の増殖型サイクル」を構成し、これらの一部を海外へ発信することにより伝統文化産業の振興を図る。
  • 伝統文化産業における匠の技とその歴史的な背景をまとめてデジタルアーカイブ化することで、伝統文化産業の理解と継承が容易になる。さらに、継承の過程で生まれた新しい知見を「知の増殖型サイクル」で取り込み、その利活用によって地域社会の振興を支援できる。

②郡上白山文化遺産のデジタルアーカイブと新たな観光資源の発掘

  • 郡上白山文化遺産のデジタルアーカイブ(文化的伝統の収集と調査、建造物・建築物群の歴史的な価値の調査、白山信仰の三馬場の調査)において「知の増殖型サイクル」を構成し、世界遺産への登録を支援する。
  • 郡上白山の伝統文化の調査、建造物、建築物群の歴史的・文化的価値の調査並びに白山信仰の三馬場の調査を綿密に行い、デジタルアーカイブ研究により、新たな観光資源の発掘を支援できる。

③デジタルアーカイブ研究の拡充による地方創成イノベーションの創出

  • 本事業は、フィールドにおける効果検証をするためのデジタルアーカイブ研究として捉え、解の見えない地域課題の解決をするための地域資源デジタルアーカイブとそのメソッドを確立することである。
  • 地域の知が適切に循環・増殖することで新たな価値の創造と、これらを実践できる高度な専門的な知識を持つ人材の養成による雇用の創出を促進し、その結果として「知の増殖型サイクル」としてデジタルアーカイブの効果が認められ、さらにデジタルアーカイブの新たな展開が期待できる。また、これにより大学は地域に開かれた「知の拠点」となりうる。

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デジタルアーキビスト資格認定機構
本学が中心となり、佐々木正峰先生(元文化庁長官)をはじめ、多くの各界関係者の協力を得て全国規模のデジタルアーキビスト資格認定機構を設立し、すでに全国で約4,000名の有資格者が活躍している。

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