南アジア研究センター

概要

南アジア看板.jpgのサムネイル画像南アジア研究センター(THE CENTER FOR SOUTH ASIAN STUDIES"CSAS")は、南アジア地域(インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、ブータン、モルディブ、計7カ国)に関する、国内唯一の大学附置研究所として、2000年8月に附置されました。
設置の経緯として特筆するべきは、ペマ・ギャルポ名誉教授(当時:教授、現:名誉教授・フェロー)が主導し、杉山博文理事長の賛同を得て、学内決定により開設されたことです。ペマ・ギャルポ名誉教授は、チベット出身者として多くの学術教育活動に従事し、さらに社会・メディアにおいても活動していましたが、かねてより「南アジア地域を一つの範囲として」認識し、研究対象とすることの意義を強く主張されていました。

従来から日本では、インドあるいはパキスタンなど、南アジアの各国別の研究は継続され、多くの業績を生み出していた。それは、「インド研究」、「パキスタン研究」との表現からも明らかです。
しかし、これら7カ国の一つのまとまりとして地理的・文化的にもつながり強い地域「南アジア」という概念から、地域研究を広める必要がありました。また国際的にも1つの国に限定せず、「面」として学術研究である「南アジア研究」が急速に進行していました。
日本と南アジア諸国、特にインドとの結び付きが強まるなか、経済界も経済交流の活発化に大きく期待していた。岐阜県、県内経済団体からの南アジア地域への関心度も高まり、県内「地域研究」の「シンクタンク」としての役割も期待されました。

これらの状況のなか本学は、「南アジア研究センター」を附置した。初代センター長には、ペマ・ギャルポ名誉教授が就任、今日まで重責を担い続けています。
研究センターは、2000年6月22日施行の『岐阜女子大学南アジア研究センター規程(以下、『規程』)に従い組織、運営が行われています。その目的を『規程』第2条では、「南アジアの国々を中心に、この地域の文化・経済・政治等総合的研究を目的としながら、特に現在の動向に注目し、理論的実践的研究を通して県内及び県外に必要な情報の提供及び関連事業を行う」と定めています。

設立以来すでに17年度目となり、組織・活動は非常に拡大、充実しています。2017年度の人員組織は、センター長、客員教員9名(客員教授8名、客員准教授1名)、特別研究員13名、研究助手1名計24名により構成されています。これらは、南アジア地域における幅広い専門分野、研究・教育業績、研究計画などから学内手続きを経て委嘱決定します。本研究センターの特徴の一つですが、在日外国人研究者3名(インド、中華人民共和国、オーストラリア)、在外外国人研究者2名(インド)が特別研究員として研究・調査活動に参加しています。

研究センターにおける活動は後述しますが、設置当初は「岐阜市の私立女子大学である岐阜女子大学が、なぜ南アジア研究を?」との反応が多く、疑問の声が大きくありました。しかし、センターの活動はもちろん、センター員各位の学術研究により、今日では学界において存在は高く評価されています。また、新聞・テレビなどメディアでの報道、解説出演、寄稿、国会における参考人陳述(2017年4月28日、衆議院外務委員会、福永正明客員教授)など、「岐阜女子大学南アジア研究センター」の名称は「南アジア研究機関」として、確実に社会に認知されたと考えています。

現在、センター員である客員教授が大学学部生、および公開講座受講生を対象とする計2科目を担当しており、研究センターにおける知見、さらに南アジア地域の動向や人びとの暮らしと社会など多くの内容について教授しています。
ペマ先生.jpegのサムネイル画像福永先生.jpgのサムネイル画像 今後も、日本における南アジア研究を発展さのみならず、南アジア地域における日本研究にも助力し、さらに日本と南アジア地域の人びとの友好、市民レベルでの交流促進のために活動する所存です。

写真 左 センター長(名誉教授兼フェロー) ペマ・ギャルポ
写真 右 特別客員教授 福永正明

活動報告

南アジア研究センターは、『規程』の定めに従い、主に以下の活動を展開しています。1.南アジア地域総合研究、2.センター員個別研究、3.国内外の研究連携、および学内外の研修・研究活動支援、4.一般向け公開事業、5.情報提供サービス。以下、詳述します。

南アジア地域総合研究

1.センター総括研究

センター員すべてが参加する「研究会」において、南アジア地域全体の問題、あるいは、時事的事象について、討議と研究を行います。また、国内外の識者を招いて、南アジアに関する多彩なテーマでの「南アジア戦略外交研究会」を実施しています。外国からの専門家の場合、特に通訳を用いることなく、英語での発表による研究会となります。
過去2年度開催された、海外著名研究者を招いての「戦略外交研究会」は、以下の通りです。

(1)岐阜女子大学南アジア研究センター 第19回南アジア外交戦略研究会

日 時 2016年2月12日 午後7時~9時
講 師

マリー・ソデルベリー教授
(欧州日本研究所所長、ストックホルム商科大学教授)

南アジア研究センター_欧州日本研究所紹介.jpgのサムネイル画像

会 場 公益財団法人国際文化会館(東京都港区六本木)
テーマ 「開発協力大綱:日本の国益」

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(2)岐阜女子大学南アジア研究センター 特別セミナー

日 時 2017年5月27日 午後2時~4時
講 師 プラディープ・バイジャール氏
(元インド中央政府・通信規制委員会委員長)
テーマ 「インドの行政・企業~合弁会社設立から国営企業民営化まで」
会 場 公益財団法人国際文化会館(東京都港区六本木)

2.センター地域・課題小グループ研究

南アジア地域を面として考え、理解することを目的とする研究センターですが、各対象国別の研究、テーマ別による小グループ研究活動も実施しています。例えば、ベンガル語は、インドとバングラデシュで使用される言語であり、「ベンガル地域グループ」では国の枠組みを超えた「小さな面」としてのベンガル語地域についての研究を進めています。また近年の課題として、インド洋における安全保障問題があり、「安全保障問題グループ」が、その専門家であるセンター員を中心として研究活動を実施しています。

センター員個別研究

各センター員は、個別の専門領域と対象地域を有しており、さまざまな活動を進めています。その成果は、センターにおいて『年度業績一覧』としてまとめられています。また、センター内の上記各種研究会では発表と討議が活発に行われ、特に優れた研究成果については、センター刊行の紀要(年刊)である『南アジア・アフェアーズ』に掲載されます。

国内外の研究連携、学内外の研修・研究活動支援

1.岐阜女子大学「公開講座」
本学がエクステンションセンターにおいて主催する、一般向けの夜間「公開講座」において、南アジア地域に関する講座をセンターが担当しました。

<2003年実施の講座内容>

  1. 「南アジア国際政治の動向」
  2. 「チベット問題をめぐる中印関係」
  3. 「南アジアの歴史と風土」
  4. 「ヒンドゥー教の世界」
  5. 「皆アジアの農村と都市」
  6. 「紛争から平和へ~スリランカ~」
  7. 「日本と南アジアの結び付き」
  8. 「21世紀の南アジアへの期待」

2.「地域研究コンソーシアム」の加盟研究機関
この組織は、「共同研究及び共同調査を通じて、国家や地域を横断する学際的な地域研究を推進するとともに、 その基盤としての地域研究関連諸組織を連携する研究実施・支援体制を構築すること」を目的としています。そして、「人文・社会科学系および自然科学系の諸学問を統合する新たな知の営みとしての地域研究のさらなる進展を図る。」ために活動しています。特に、若手の研究者が「年次集会」、「シンポジウム」に参加しており、幅広い知見の獲得のため努力しています。
本研究センターは、2003年よりこのコンソーシアムに加盟しており、全国101研究機関(2017年10月現在)の一つとして、活動を続けています。

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3.国立国会図書館の「アジア情報機関ダイレクトリー」の掲載研究機関
「アジア情報機関ダイレクトリー」は、国立国会図書館関西館アジア情報課が担当しています。その内容は、「アジア資料・情報の流通を促進するため、アジア関係資料を所蔵する日本国内の主要機関の基本情報を収録しHP上での公開」であす。本研究センターは、掲載研究機関として指定を受けており情報を提供しています。

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4.東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センターの『アジア研究情報ゲートウェイ』の掲載研究機関
『アジア研究情報ゲートウェイ』は、「日本におけるアジア学の研究情報を総合的に組織化し、発信することを目的」として、2003年に創設されました。南アジア研究センターは、「リンク集」において掲載され、情報を提供しています。

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5.独立行政法人国際協力機構(JICA)の「PARTNER」、団体登録研究機関
「PARTNER」は、国際協力の分野で活躍を目指す個人の方と、国際協力に関わる人材を求めている企業・団体を結び付けるとともに、国際協力に携わるまで/携わってからのキャリア形成に有用な情報を提供する「国際協力キャリア総合情報サイト」としてJICAにより運営されています。

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6.岐阜女子大学南アジア研究センター「メール・マガジン」
南アジア研究センターの活動紹介、イベント告知、情報提供などのため、大学内サーバーを利用した電子メールによる「メール・マガジン」を発行しています。対象は、研究会・イベントの参加者、南アジア関係の諸団体、研究者、企業関係者などであり、約500名を対象として発行しています。

(1)岐阜女子大学南アジア研究センター 「創設記念 特別講演会」

岐阜女子大学南アジア研究センターの創設を記念して、在日インド大使館の全面的な協力により下記の概要にて開催しました。この講演会開催は、内外に「岐阜女子大学に南アジア研究センターあり」との認識を広めることができました。

月 日 2003年6月28日 午後6時30分~午後9時15分
講 師 インド特命全権大使 アフターブ・セート閣下
会 場 在日インド大使館オーディトーリアム
後 援 在日インド大使館、財団法人岐阜県国際交流センター、財団法人日印協会
テーマ 「開発協力大綱:日本の国益」

(2)「岐阜と南アジアを結ぶ総合交流プロジェクト」

年 度 2001年度
助成金名 財団法人国際交流センター 「水と緑の国際交流基金助成金」
内 容 1)南アジア現地セミナーの実施
派遣:南アジア7都市において開催のため計4名を2~3週間
2)岐阜県内において「南アジアの社会と文化」講演会の開催
3)事業報告書の刊行

(3)「在住外国人と共生できる岐阜」の構築を目指す総合事業

年 度 2003年度
助成金名 財団法人国際交流センター 「水と緑の国際交流基金助成金」
内 容 1)「南アジアの岐阜県内在住外国人」面接調査
2)公開シンポジウム
3)事業報告書の刊行

(4)「岐阜・白川郷の「世界文化遺産」登録により得た経験を活かす国際協力事業

年 度 2004年度
助成金名 財団法人岐阜県国際交流センター 「水と緑の国際交流基金助成金」
内 容 1)インド国立バナーラス・ヒンドゥー-大学地理学科のラーナー・ピー・ビー・スイィフ教授を本学訪問教授として招聘した。
2)同教授による本学における研究会、岐阜県民講座(2カ所)での講演。
岐阜県関係諸機関の訪問、白川村における現地調査、白川中学校での特別授業(中日新聞飛騨版に掲載、添付)などを実施した。
3)事業報告書の刊行

(5)外務省国際情勢講演会

 外務省が公募する「国際情勢講演会」事業について、南アジア研究センターとして開催申請し、下記の通り一般向けの講演会を開催しました。(主催:岐阜女子大学南アジア研究センター)

1) 2006年度

月 日 2007年3月3日
講 師 平林博氏(外務省 特命全権大使(査察担当))
テーマ 「インド、日本はこの大国とどのように付き合うべきか」
会 場 社団法人日本外国特派員協会(東京都千代田区)
共 催 外務省

2) 2007年度

月 日 2008年3月1日
講 師 渥美千尋氏(外務省 南部アジア部 部長)
テーマ 「昨今のインドと日本」
会 場 岐阜女子大学文化情報研究センター
共 催 外務省

3) 2008年度

月 日 2009年2月28日
講 師 平林博氏(元インド及びフランス大使、財団法人日印協会理事長)
テーマ 「躍進するインドと豹変する日印関係」
会 場 岐阜女子大学文化情報研究センター
共 催 外務省

4) 2009年度

月 日 2010年2月27日
講 師 猪俣弘司氏(外務省 南部アジア部 部長)
テーマ 「南アジア情勢と日本外交」
会 場 社団法人日本外国特派員協会(東京都千代田区)
共 催 外務省

5) 2010年度

月 日 2011年3月9日
講 師 榎木泰邦氏(元インド日本国大使)
テーマ 「新興経済大国インドの戦略的重要性を解く」
会 場 社団法人日本外国特派員協会(東京都千代田区)
共 催 外務省

6) 2012年度

月 日 2013年2月7日
講 師 堂道秀明氏(元インド日本国大使、国際協力機構 副理事長)
テーマ 「日本外交におけるインドの重要性」
会 場 国際文化会館(東京都港区)
共 催 外務省
南アジア研究センター_国際情勢講演会写真2.jpgのサムネイル画像 南アジア研究センター_国際情勢講演会写真1.jpgのサムネイル画像 南アジア研究センター_国際情勢講演会写真3.jpgのサムネイル画像

(6)セミナー、シンポジウム

1)チベット問題と五輪の行方

月 日 2008年5月24日
内 容 ・「チベット問題の真相、国際社会の関心、中国側は何を考えているのか、五輪はどうなるのか」 センター長 ペマ・ギャルポ
・パネルディスカッション
会 場 国際文化会館(東京都港区)

2)ムンバイ・テロ事件~背後に見える世界の将来~

月 日 2009年1月10日
内 容 ・「激動する南アジア」 センター長 ペマ・ギャルポ
・「ムンバイ事件を読み解く」 福永正明 客員教授
・「ムンバイ・テロの背景を探る」清水学 帝京大学教授
会 場 アルカディア市ヶ谷

研究報告

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南アジア研究センター 紀要(年刊) 『南アジア・アフェアーズ』

『南アジア・アフェアーズ』は、南アジア研究センターの研究活動を報告し、その業績を紹介、さらに内外研究者による専門論文を内容として刊行しています。国内外の学界においては、「査読付き学術誌」として高い評価を得ています。例えば、南アジア地域の大学院生・大学院修了者などからの英文投稿もあり、査読委員会による審査を経て掲載しています。
なお、第1号には「創刊記念:巻頭エッセー」として故川喜田二郎先生より「ヒマラヤの山村にて」との文を掲載し、日本における南アジア研究専門学術誌として出発を果たしました。

■『南アジア・アフェアーズ』
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